どっちで古物商を取ればいい?
これから古物商をとろうと思った時に法人と個人のどちらで取ればいいのかわからないですよね。
そもそも、法人と個人の古物商にはどのような違いがあるのでしょうか?
そこで、この記事では「古物商の法人と個人の違い」や、「個人から法人に古物商の変更ができるか?」、また、「個人と法人のどちらで古物商を取った方が良いのか?」について解説します。
この記事を書いた人
古物商は法人と個人で違いはない
まず、結論から先にいうと、法人と個人の古物商は全く同じもので、種類に違いはありません。
だから、古物商を個人で取得しようが法人で取得しようが、〝できること〟に違いはありません。
では、なぜ個人と法人で分かれているのかというと、個人の名義で中古品を売買するのか、それとも会社の名義で中古品の売買をするのかの違いです。
例えば、会社の事業として中古品の売買をするなら法人で古物商を取得する必要がありますし、会社の事業としてではく個人事業で中古品の売買をしたい場合には個人で古物商の許可を取得する必要があります。
社長の古物商を法人が使う事はできない
では、法人の代表取締役が個人で古物商を持っている場合に、その法人は中古品の売買をできるのでしょうか?
これはよく誤解されるケースですが、法人の代表取締役が古物商を持っていても、法人が中古品の売買をすることはできません。
なぜなら、社長と法人は全く別人格(別の人間)として法律上扱われるからです。
つまり、この場合、社長は個人で中古品の売買をすることはできますが、法人が社長の古物商を使って中古品売買事業をすることはできないというわけです。
なので、もし法人として中古品の売買をしたいのであれば、社長の古物商とは別に法人として古物商を取る必要があります。
因みに、もし会社が社長名義の古物商を使ったり、会社名義の古物商を社長個人が使った場合には「名義貸し」という法律違反となり、免許の取消や、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金となってしまう可能性があります。
古物商の法人と個人でメリット・デメリットには違いがある
法人と個人の古物商で〝できること〟に違いはありませんが、実は法人と個人の古物商ではそれぞれにメリット・デメリットが異なります。
このメリット・デメリットを踏まえた上で、法人と個人のどちらで古物商を取るかの検討するのがいいかと思います。
個人の古物商のメリット・デメリット
個人の古物商のメリット
- 申請内容がシンプル
- 個人が使用しているアカウントをそのまま利用できる
個人の古物商のデメリット
- オートオークションに参加できない可能性がある
- 別の人に名義変更ができない
個人の古物商の最大のメリットは法人に比べて必要書類が少ない、申請書に記入する内容もそこまで複雑ではないので、法人に比べて申請が簡単です。
また、これまでに不用品などを販売していたメルカリやヤフオクのアカウントをそのまま利用することができます。
一方で、デメリットとしては自動車やバイクなどのオークションに参加できない可能性があります。
というのも、オートオークションに参加するには、参加するオークションの協会に登録する必要があるのですが、協会によっては法人の登録しか認められていないケースもあるからです。
その他にも、個人で古物商を取得すると別の人に名義変更できないので、誰かに事業を任せたり、事業を譲渡したりする場合などは新たに古物商を取り直す必要があります。
法人の古物商のメリット・デメリット
法人の古物商のメリット
- 個人に比べて税金が優遇される
- 代表者などを別の人に名義変更が可能
法人の古物商のデメリット
- 会社の設立費用が20~30万円掛かる
- 税理士などを雇わなければならない
法人の古物商の最大のメリットは個人に比べて税制が優遇される点です。
ただし、これは古物商でのメリットというよりは、ビジネス全般に言えることではあります。
とはいえ、中古品の販売で年間でかなりの利益が見込めている場合には法人で古物商を取得した方がいいです。
また、その他のメリットとしては、個人の場合とは異なり、法人の場合には代表取締役や役員などの変更が可能です。
だから、第三者に法人を売却・譲渡した場合でも、新規で古物商の許可を取り直す必要がありません。
一方で、法人の古物商のデメリットは金銭的な部分が大きいです。
例えば、会社の設立に20〜30万円程度かかったり、顧問税理士を雇わなければいけなかったりします。
その他にも、すでに法人を設立している場合で、法人の登記簿の事業目的の中に古物商に関する内容が入っていない場合には、事業目的の追加に3〜5万円程度がかかってしまいます。
古物商の個人から法人への名義変更はできない
まだ法人を設立していない場合、一般的には個人で古物商を取得し、事業が軌道に乗ってきたタイミングで法人を設立するというケースが多いです。
その際に、個人で取得した古物商を法人に変更できるのか気になるところだと思います。
ただ、結論から言うと、個人から法人への名義変更はできません。
と言うのも、そもそも古物商は別の人に古物商許可を譲渡することができないからです。
つまり、法人として新たに古物商の許可を取り直す必要があり、警察への申請手数料19,000円を再度支払う必要があります。
一方で、古物商許可を別の人に譲渡はできないですが、法人の場合には役員の変更が可能なので、役員を総入れ替えすることで実質的に古物商の許可を譲渡することはできます。
ただし、その際には新たに役員になる人が古物商の欠格事由に該当していない必要があります。
個人から法人に切り替える際の注意点
個人から法人への名義変更はできないため、法人で古物商を再取得する必要があります。
その際に注意しないといけないのが、古物商の管理者は兼任できないという点です。
古物商は1つの許可に対して、1人の「管理者」を専任する必要があります。
そして、個人で古物商を取る場合、一般的には申請者がそのまま管理者になります。
しかし、法人を設立して新たに古物商の許可を取得する場合、個人で既に古物商の管理者になっているので、法人の古物商の管理者になれないという問題が発生してしまいます。
その問題を解決するためには、せっかく取得した個人の古物商を返納しなければなりません。
個人の古物商を返納することで、個人の古物商の管理者という立場がなくなり、法人の管理者になることができるというわけです。
因みに、個人の古物商を返納するタイミングは法人の古物商許可の受け取りのタイミングで大丈夫なので、営業できない期間なども発生しません。
また、返納しなくても第三者を管理者に専任することで、個人と法人の2つの古物商を持つことができますが、管理者は常駐する必要があるので少しハードルは高いです。
結局、個人と法人のどちらで古物商を取るべき?
上記では古物商の個人と法人のメリット・デメリットについて紹介しました。
ただ、どちらにもメリットとデメリットがあるので、「結局のところどっちを取ればいいの?」と思われたかと思います。
結論として、まだ法人を設立していな人は個人で取得し、既に法人を設立している人は法人で取得することをおすすめします。
なぜなら、それが最もコストパフォーマンスが高いからです。
例えば、まだ会社を設立していない場合には、法人設立費用や税理士費用等が発生し、事業を始める前から多額の費用がかかります。
それで事業が上手くいけば良いですが、そのまま事業が軌道に乗らなかった場合には大きな損失となってしまいます。
だから、まずは個人で古物商の許可を取得し、事業が軌道に乗ってきたイミングで法人を設立して法人で古物商の許可を取る方がローリスクで事業を始められます。
一方で、既に法人を設立していて、法人で中古品の売買事業を行うのであれば法人で古物商を取る以外の選択肢はありません。
これは冒頭でも解説した通り、法人の代表取締役が個人で古物商を持っていても、法人では中古品の売買ができないからです。
もちろん、会社の事業とは関係なく社長個人で中古品の売買をしたいのであれば、個人で許可を取得するという選択肢もありますが、そうでない以外は法人で取るようにしてください。
まとめ
この記事のまとめ
- 古物商は個人と法人で違いはない
- 個人の法人の古物商にメリット・デメリットがそれぞれある
- 個人から法人への名義変更はできない
- 法人がない人は個人で、法人があるひとは法人で申請すべき
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所