古物商の許可を取らずに売買してしまっていたんですけど・・・
何かモノを売買するからといって古物商を必ず取らなければいけないんというわけではありません。
ただ、本当は古物商の許可を取らないといけないのに、無許可で売買を行ってしまっている人も多いです。
そこでこの記事では、古物商の許可が必要な理由やどのような場合に古物商が必要なのか、古物商ができる仕事について専門家が解説します。
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古物商は盗品を簡単に現金化させない為に必要
中古品を売買する場合には古物商の許可が必要とよくネットで言われていますよね?
なぜ古物商の許可を取らないといけないのでしょうか?
その理由は、中古品の売買を許可制にすることで盗まれた物の売買を未然に防いだり、盗まれた物をすぐに発見できるようにする為です。
例えば、高級時計を盗んだ強盗犯がその時計を誰にでも買い取ってもらうことができたらどうでしょう?
盗んだ物を簡単に現金化できてしまうので、世の中にもっと窃盗や強盗が増えてしまうかもしれませんよね。
しかし、古物商のように中古品の売買を許可制にすることで、買取業者は免許証等で相手の本人確認を行った上で、いつ、何を買い取ったかなどを記録する義務が課されるため、強盗犯は盗品の現金化が難しくなるのです。
また、仮に買い取ってしまったとしても、誰から購入したか記録しているのですぐに捕まえることができます。
このように古物商は盗んだ物を簡単に現金化させないことで窃盗の抑止力となっているのです。
古物商が必要か不要かは2つのポイントで判断
自分に古物商の許可が必要か不要かを知るには以下の2点を確認すれば大丈夫です。
確認ポイント
- 取り扱う商品が『古物』かどうか?
- 古物商が必要な取引に該当するか?
上記の①と②の両方に該当する場合には古物商の許可が必要となります。
逆に、どちらか一方にのみ該当する場合には古物商の許可は不要です。
①取り扱う商品が『古物』かどうか?
取り扱う商品が『古物』に該当しない場合には古物商の許可は不要です。
では、『古物』とは何かというと、以下の13品目の中で、一度使用された物や、使用はされていないけど使用のために購入した物、これらのリメイク品のことをいいます。
古物商に該当する13品目
品目名 | 具体例 |
美術品類 | 絵画、油彩、水彩、版画、彫刻、書画、骨とう品、工芸品、アンティークなど |
衣類 | 婦人服、紳士服、子供服、ベビー服、和服、和服小物、ジーンズなど |
時計・宝装飾品類 | 腕時計、置時計、眼鏡、宝石・指輪・ネックレス、アクセサリー、貴金属類など |
自動車 | 自動車、タイヤ、バンパー、カーナビ、サイドミラー、部品類など |
自動二輪車及び原付自動車 | オートバイ、原付自転車、マフラー、エンジン、部品類など |
自転車 | 自転車、電動アシスト自転車、一輪車、三輪車、かご、タイヤ、サドル、部品など |
写真機類 | カメラ、アンティークカメラ、写真機、レンズ、ビデオカメラ、顕微鏡、双眼鏡、天体望遠鏡、光学機器など |
事務機器類 | パソコン、パソコン周辺機器、コピー機、FAX、電話機、レジスター、タイムレコーダー、シュレッダー、各種測定機器など |
機械工具類 | 家庭用ゲーム機、家電製品、家庭用電話機、土木機械、工作機械、化学機械 |
道具類 | 家具、楽器、スポーツ用品、日用品、パソコンソフト、ゲームソフト、CD、DVD |
皮革・ゴム製品類 | バッグ、かばん、靴、財布など |
書籍 | 単行本・文庫本・雑誌・漫画・写真集・児童書・辞書・古書・地図など |
金券類 | 商品券、航空券、乗車券、各種入場チケット、郵便切手、テレホンカードなど |
取り扱う物が上記の13品目の中のどれかに該当する場合には『古物』を取り扱っているということになります。
古物商に該当しない物
私物 | 自分が使用する目的で購入した物は古物に該当しません。 |
新品の物 | 13品目に該当してもお店から購入した新品も古物に該当しません。 |
無料でもらった物 | 無料でもらったものは私物扱いとなるので古物に該当しません。 |
輸入した商品 | 自分が輸入した商品については古物に該当しません。 |
資産・投資目的の貴金属 | インゴット、金貨、金塊、古銭、古札、プラチナなどは古物に該当しません。 |
消費する物 | 食品、お酒、医薬品、香水、化粧品などの消費してなくなるものは古物に該当しません。 |
原材料となる物 | 金属くず、鉄くず、銅線、空き缶など原材料として取引されるものは古物に該当しません。 |
価値のないもの | ごみ、一般廃棄物などは古物に該当しません。 |
一方で取り扱う物が上記に該当する場合には『古物』を取り扱っているわけではないので、古物商は不要となります。
ただし、取り扱う物によっては他の許可が必要となるケースもあるので注意して下さい。
②古物商が必要な取引に該当するか?
自分の取り扱う商品が古物に該当すると分かったら、次に確認しなければいけないのが『取引の種類』です。
古物について以下の取引をする場合には古物商が必要と取引ですので古物商の許可を取得する必要があります。
古物商が必要な取引
- 売買
- 交換
- 委託売買
- 委託交換
ただし、これだけではイマイチどのような場合に古物商の許可が必要なのかイメージしにくいと思います。
そこで、どのような場合に古物商の許可が必要になるのかや、古物商の許可を取るとできる仕事の具体例を挙げながら見ていきましょう。
古物商が必要な場合と古物商ができる仕事例
古物商が必要な場合 | 具体例 |
買い取った古物を売る | ネットや店舗で中古品を仕入れて販売するような場合 |
買い取った古物を修理して売る | 壊れたスマホやパソコンなどを修理して販売するような場合 |
古物を買い取って部分的に売る | 壊れたスマホやパソコンの他、壊れた車やバイクから使用可能な部品を抜き取り販売する場合 |
古物を預かって委託販売する | 他人の代理で商品を出品して販売したり、他人から委託を受けて商品を販売して手数料をもらう場合 |
古物を他のものに交換する | 家電製品を販売する際に、商品を下取りして、クーポンやポイント等で値引きするような場合 |
買い取った古物をレンタルする | 中古の医療機器や中古車を買い取って、それらをレンタルする場合 |
買い取った古物を輸出する | 国内のフィギアやカードゲーム等の玩具や家電製品等の中古品を買い取って海外に輸出する場合 |
インターネット上で 古物の売買・レンタル・修理をする |
上記の内容をネットで行うような場合 |
古物商の許可が必要となる場合には上記のようなケースが挙げれます。
特に最近では副業としてメルカリやラクマ、ヤフオクを利用しているケースをよく見かけますが、中には古物商の許可が必要なのにも関わらず、無許可で中古品販売をしている方もいます。
ですので、自身の取引が古物商の必要な場合に該当しないかどうかをしっかりと判断した上で取引するようにしてください。
古物商ができる仕事例
古物商ができる仕事 | 古物商を取るとできる仕事例 |
中古品販売業 | 中古車販売店、古着屋、ブランド品ショップ、アンティークショップ、古本屋、リサイクルショップなど |
中古品修理・部品販売業 | 中古車屋、中古バイク屋スマフォショップ、パソコンショップ、楽器店など |
出張買取 | 貴金属や宝石、ブランド品等の出張買取をして専門業者に販売する出張買取サービス |
レンタル業 | 医療機器のレンタル業、中古車レンタカー(但し、別途レンタカー業の許可が必要)など |
ネット通販業 | 中古品のネット通販 |
古物商の許可が必要な取引という事は、逆に言うと、古物商にしかできない仕事といわけです。
つまり、古物商の許可を取得することで上記のような仕事ができるようになります。
古物商が不要な取引もある
自分の持ち物を売る場合は不要
自分の持ち物は『古物』に該当しない為、例え、中古品であったとしても古物商は不要です。
ただ、「じゃあ、自分が使う目的で購入したことにして、古物商を取らずに中古品の売買しちゃえばいいんだ!」と思いませんでしたか?
ですが、それは絶対にしないで下さい。
なぜなら、そうやって無許可で中古品の売買をしようとする人も多い為、その点についても規制の対象とされています。
例えば、以下のような場合には私物ではなく古物の売買と見なされる可能性があります。
私物の売買とは見なされないケース
- 家電製品等の同一の商品を一時点において5点以上出品している場合
- CD・DVD・パソコン用ソフト等の同一の商品を一時点において3点以上出品している場合
- 自動車・二輪車の部品等の同一の商品を一時点において3点以上出品している場合
- ブランド品等のる商品を一時点において20点以上出品している場合
因みに、同一の商品とは全く同じ商品という意味ではなく、同じ種類の商品という意味になります。
ですので、例えば違うメーカーの液晶テレビを過去のどこかのタイミングで5点出品していた場合、例え、私物を販売していたと言い張っても家電類の古物を取り扱っていたと見なされる可能性があるわけです。
無償でもらったものを売る場合は不要
無償でもいらった物を売る場合には古物商の許可は不要です。
なぜなら、わざわざ盗んだ物を無償で誰かにプレゼントするということは考えにくく、無償でもらったものには盗品が紛れ込む可能性が低いからです。
ですので、不用品として無料で回収した物を売る場合には古物商の許可は不要です。
ただし、不用品を回収した中の一部を販売し、一部をゴミとして破棄する場合には一般廃棄物収集運搬業許可という別の許可が必要になります。
自分が売った相手から売ったものを買い戻す場合は不要
あまりないケースですが、自分が売った相手から売ったものを売買目的で買い戻す場合にも古物商の許可は不要です。
なぜなら、自分が売った相手から直接買い戻す場合には、その物が盗品である可能性はほとんどないからです。
ただし、自分の売った相手が、更に別の人に販売し、別の人から売買目的で買い戻す場合に古物商の許可が必要となります。
この場合、別の人から盗んであなたに販売している可能性があるからです。
新品で購入した物を売る場合は不要
お店から新品で購入した場合にはも古物商の許可は不要です。
なぜなら、一度も市場に出回っていないメーカーや小売業者、卸売業などから購入した新品商品についてはお店から新品の商品として購入しているので、その商品が盗品である可能性は極めて低いからです。
一方で、新品は新品でも一般の人から購入した新品未使用品を買って販売する場合には古物商の許可が必要となります。
というのも、その一般の人が新品の商品を盗んであなたに販売している可能性も考えられるからです。
自分が海外から仕入れた物を日本国内で売る場合は不要
自分が海外から仕入れた物を日本国内で売る場合にも古物商の許可は不要です。
理由としては、古物商の目的はあくまでも日本国内の盗品を市場に流通させないことであり、海外の盗品までは日本の法律で規制できないからです。
ただし、対象外になるのはあくまでも自分が海外から仕入れた物であり、誰かが海外から仕入れた物を国内で販売する場合には古物商の許可が必要となります。
古物商の許可を取ってもできないビジネス
ここまでは古物商の許可が必要な場合や古物商の許可を取得することでできる仕事について解説してきました。
古物商の許可を取得することで多くのビジネスができることがわかったと思います。
しかし、中には古物商の許可を取得してもできない仕事もあるので注意して下さい。
古物商で不用品(ゴミ)の回収はできない
古物商でできる仕事として最も誤解が多いのが不用品の回収です。
特に、最近は高齢化社会などの影響で遺品整理などの需要が大きく、不用品の回収をしたい方も多いです。
しかし、残念ながら古物商の許可で不用品の回収はできません。
なぜなら、不用品(ゴミ)を回収するには一般廃棄物収集運搬業許可という別の許可が必要だからです。
因みに、先ほど「無償でもらったものを売る場合には古物商不要」と説明しましたが、あくまでも販売する前提の物に限って回収することが可能なだけですので注意して下さい。
古物商で質屋はできない
質屋についても古物商の許可を持っていたとしてできません。
質屋というのは中古品の販売と少し似ていますが、実際には物を預かる代わりに金銭を貸し付けることが目的だからです。
そして、日本では金銭の仕事として金銭の貸し付けを行うにはかなりハードルが高く、質屋を行うには質屋営業の許可を取得する必要があります。
古物商でお酒の販売はできない
近年で国産のウイスキーが高値で取引されており、ブランド品買取専門店などでもお酒の買取を行っているお店も少なくありません。
だから、古物商の許可があれば買い取ったお酒を販売できると誤解してしまっている人も多いみたいです。
しかし、古物商の許可を取得したとしてもお酒の販売はできません。
そもそも、お酒は古物に該当しない上、お酒を販売するには酒類販売免許という別の許可を取得しなければならないからです。
知らずに無許可で中古品販売をやってしまった時は?
無許可で古物営業を行った場合には『三年以下の懲役又は百万円以下の罰金』に処される可能性があります。
これは、例え悪気があったわけではなく、知らずに無許可で中古品の販売をしてしまっていた場合でも、法律により罪に問われる可能性があります。
因みに、今まで無許可でバレずにできたからといって、無許可のまま営業を続けることは絶対に辞めた方がいいです。
なぜなら、ライバル業者や同業やが警察署に通報するケースも良くあるからです。
自分の所はちゃんと法律に則って古物商をとって営業しているのに、無許可営業のライバル業者に商売を邪魔されたくないと考える方も多い為です。
無許可の場合にはすぐに古物商を取る
実際に私の所にも「古物商の許可が必要とは知らずに無許可で営業してしまった・・・」という相談がたくさんあります。
そのような場合はどうすればいいかというと、とにかくすぐに古物商の許可を取る事です。
でも、無許可で営業していて古物商の申請をした際にバレて捕まらないか心配になりますよね?
もちろん、これまでの取引実績や状況などよるので一概に絶対に捕まらないとは断言できませんが、大抵の場合には古物商の許可を取得することで見逃されるケースが多いです。
古物商についてもっと詳しく知りたい方におすすめの記事
まとめ
この記事のまとめ
- 古物商は盗品を簡単に現金化させない為に必要
- 古物商が必要かどうかは「古物」「取引」で判断する
- 古物商が不要な取引もある
- 無許可の場合には三年以下の懲役又は百万円以下の罰金の可能性
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所