古物商だけ取得すれば大丈夫?
これから中古車販売店を開業しようとした時に、どうやって開業すればいいかわからないですよね?
古物商だけを取得すればいいのか、その他にどのような許可を取得しなければいけないのかわからない方も多いです。
この記事では中古車販売店の始め方と注意点や、古物商を取得するだけで始められるのかや、自動車商とは何かまでわかりやすく解説します。
中古車販売店を始めるには古物商を取得する必要がある
中古車販売店を始めるには「古物商」の許可を取得しなければなりません。
では、古物商とは一体何なのでしょうか?
中古品等を売買して商売する場合に、営業所がある場所を管轄する公安委員会の許可を受けなければならないのですが、その許可を「古物商の許可」と言います。
なぜ、中古品等を販売する場合に、古物商の許可を得なければならないのかというと、中古品市場への盗品の流入を防ぐためです。
最近では、かなり中古品売買の市場規模が大きくなってきていますが、盗難品がフリマサイトやリサイクルショップなどに売られているケースも多いです。
そして、自動車に関しても、盗難車が中古車市場で流通したり海外に売られることもあります。
そこで、中古品を販売する場合には公安委員会に届け出させることで、警察署が営業者を把握し、盗品の中古品市場への流入を防ぎ、又、流入したとしても被害者に速やかに回復出来るようにするしているのです。
ちなみに、「古物商許可」というのは、自動車だけではなく中古品全般を買取販売するための許可のことですが、基本的に古物商を取得すれば、古物商の許可だけで中古車販売店は開業できます。
よく聞く自動車商とは?
古物商の種類 | 売買する中古品の例 |
①美術商 | 絵画、版画、彫刻、骨とう品、工芸品、アンティーク・登録火縄銃・登録日本刀など |
②衣類商 | 和服、洋服、子供服、和服小物、帽子、ジーンズ、布団、絨毯、旗など |
③時計・宝飾品商 | 腕時計、置時計、眼鏡、宝石・指輪・ネックレス、アクセサリー、貴金属類など |
④自動車商 | 自動車、タイヤ、バンパー、カーナビ、サイドミラー、その他部品類など |
⑤自動二輪車及び原動機付自転車商 | バイク本体、原付自転車、マフラー、エンジン、部品類など |
⑥自転車商 | 自転車、電動アシスト自転車、一輪車、三輪車、かご、タイヤ、サドル、空気入れ、その他部品など |
⑦写真機商 | カメラ、アンティークカメラ、写真機、レンズ、ビデオカメラ、顕微鏡、双眼鏡、天体望遠鏡、光学機器など |
⑧事務機器商 | パソコン、パソコン周辺機器、タブレット端末、コピー機、プリンター、FAX、電話機、レジ、タイムレコーダー、シュレッダー、各種測定機器など |
⑨機械工具商 | 家庭用ゲーム機、家電製品、家庭用電話機、土木機械、工作機械、化学機械、医療機器、20トン以下の船舶など |
⑩道具商 | 家具、楽器、スポーツ用品、日用品、釣り具、パソコンソフト、ゲームソフト、CD、DVD、トレーディングカードなど |
⑪皮革・ゴム製品商 | バッグ、かばん、皮靴、財布など |
⑫書籍商 | 単行本・文庫本・雑誌・まんが・写真集・児童書・辞書・古書・地図など |
⑬金券商 | 商品券、航空券、乗車券、各種入場チケット、郵便切手、テレホンカード・プリぺーどカードなど |
中古車販売店をはじめるには「自動車商」を取らないといけないと聞いたことがある方も多いかもしれません。
この自動車商とは、古物商の許可の一種で、中古の自動車や自動車部品類などをメインとして取引する古物商のことを言います。
例えば、上記は古物商の種類と、メインとして取り扱い中古品の具体例を記載した表なのですが、メインで取り扱う品目によって呼び方が異なることが分かります。
古物商許可の申請書を作成する際に、メインとして取り扱う品目を1つ、サブで取り扱う商品を複数選択することができるのですが、この中でメインに取り扱う品目に中古自動車や中古自動車部品類などを選択した場合に「自動車商」となります。
ですので、中古車販売店を開業するのであれば、メインで取り扱う古物の区分は「自動車類」を選択するようにしてください。
因みに、メインで別の区分(例えば、衣類)を選択し、サブに取り扱う区分で自動車類を選択している場合でも、中古車を売買することは可能です。
古物商を取得して自動車商になるための要件
古物商を取得して自動車商になる為には、以下の要件を満たす必要があります。
- 古物商の欠格事由に該当しないこと
- 中古車販売の経験があること
- 自動車保管場所があること
因みに、①については古物商を取得する全ての人が満たさなければならない要件ですが、②③については自動車商・自動二輪車及び原動機付自転車商の場合にのみ求められる要件です。
というのも、自動車商は他の品目に比べて審査が厳しいと言われています。
なぜなら、中古自動車は価格が高く、犯罪グループなどにターゲットにされやすいからです。
例えば、もし盗難車が簡単に中古車市場で販売できるのであれば、犯罪グループによる盗難がますます増えてしますよね?
そこで、誰でも簡単に中古車の売買ができないようにするために、他の品目に比べて厳しく審査されるというわけです。
古物商の欠格事由に該当しないこと
自動車商になるための要件の1つめは「古物商の欠格事由」に該当しないことです。
古物商の欠格事由とは以下の10個のことです。
これらのどれか1つにでも該当する場合には古物商の許可を取得することができません。
実務経験があること
この点は申請先となる警察署によっても若干異なるのですが、自動車商に関してはこれまでの実務経験が求められることがあります。
具体的には、大体3年程度の実務経験が求められています。
なぜ、自動車商にだけこのように実務経験が求められているかというと、先程も少し触れましたが、中古自動車は取引額が大きくなるため、犯罪グループなどのターゲットとなりやすいからです。
犯罪グループは盗難車という事実を隠して、中古車の買取を求めてくる可能性がありますが、その際に盗難車であるかどうかを見極める能力が必要となるので実務経験を設けているわけです。
因みに、この実務経験というのは申請者本人が持っている必要はなく、あくまでも管理者が持っていれば大丈夫です。
管理者とは?
管理者とは、中古車の買取や販売を法律に従って適正に行う責任者のことで、1店舗につき最低1人は管理者を置かなければなりません。管理者には申請者がなることも出来ますが、別の人を管理者とすることもできます。
自動車保管場所があること
この点に関しても申請先となる警察署によっても若干異なるのですが、自動車商は自動車保管場所があることを求められるケースが多いです。
というのも、中古車販売を行うのであれば、自動車を売買するわけなので一般的に考えると中古車を保管場所が必要と考えられるからです。
因みに、保管場所は営業所の近くにあることが望ましいですが、必ずしも営業所の近くである必要はありません。
また、添付する書類の内容としては、保管場所の位置がわかる簡易地図や、借りている土地を使用する場合には賃貸借契約書のコピーや使用承諾書、自分の所有の土地の場合には所有権を証明する書類等を求められることもあります。
実務経験や自動車保管場所がないと古物商は取れない?
上記では古物商を取得して自動車商になるための要件を解説しましたが、中には実務経験がない方や自動車保管場所がない方もいると思います。
その場合、古物商の許可を取得することができないのでしょうか?
結論から言うと、実務経験や自動車保管場所がない場合でも古物商の許可を取得することができます。
なぜなら、実務経験や自動車保管場所はあくまでも絶対的な要件ではないからです。
ただ、絶対的な要件ではないにも関わらず、警察署によっては実務経験や保管場所がないと難しいと言われるケースもあります。
そのような場合には以下の対策を取ると良いです。
実務経験がない場合の対策
実務経験が求められる理由は、法律によって古物商の管理者に対し「取扱う中古品が不正品であるかどうかを判断するための知識や技術、経験を得させるよう努めなければならない。」と定められているからです。
ただ、これは義務(必ずやらないといけないこと)ではなく、努力義務(やるように努力すること)なので、中古品が不正品であるかどうかを判断するための知識や技術、経験を身に付ける努力をすれば問題ありません。
具体的には、一般社団法人日本中古自動車販売教会連合会(JU)の傘下組織で実施されている講習などを受講すれば問題ありません。
ですので、もし警察署担当者から中古車販売の実務経験が必要と言われたら、講習を受講予定である旨を伝えると良いです。
自動車保管場所がない場合の対策
自動車保管場所がない場合の対策についてですが、これはビジネスモデルによってことなります。
例えば、古物商の許可取得後に自動車保管場所を設けるのであれば、その旨を担当者に説明すれば大丈夫です。
一方で、今後も自動車保管場所を設けない場合もあるかと思います。
この場合には、なぜ、自動車保管場所を設けないのか、担当者が納得するような理由を説明する必要があります。
また、警察署によっては、その理由を書面で求められるケースもあるので、事前に警察署に書面が必要かを確認しても良いかと思います。
古物商の許可を取得して自動車商になる流れ
古物商の許可を取得して自動車商になる流れとしては以下のような流れになります。
古物商の許可に関する情報収集をする
事前に連絡して警察署に相談に行く
必要書類を収集する
申請書類を作成する(その際に品目の選択を自動車商にする)
申請書を提出し、申請手数料19,000円を支払う
審査完了後に古物商許可証を受け取る
以下ではそれぞれの流れについて簡単に解説します。
古物商の許可に関する情報収集をする
まずは、古物商の許可に関する情報収集をします。
先程も解説した古物商の要件や、どのように古物商を取得するのか、取得にどれぐらの費用が掛かるのか、どれぐらの期間が必要なのかを事前に情報収集しておいた方がいいです。
ただ、基本的にはこちらの記事を最後まで読んでもらえれば、中古車販売をするための古物商の許可取得には問題ありませんので次のステップに進んでください。
事前に連絡して警察署に相談に行く
古物商の許可は警察署に申請書を提出します。
そして、申請する警察署によって必要な書類や記載方法が異なることが良くあります。
ですので、事前に警察署に相談に行くのが良いです。
ただ、常に警察署に古物商の担当者がいるわけではないので、事前に警察署にアポイントを取ってから相談にいくようにしてください。
必要書類を収集する
古物商は申請書以外に添付する必要が書類があります。
住民票や身分証明書など、基本的な書類に関しては、どこも変わらないのですが、それ以外の書類を求められることも警察署によってはあります。
ですので、警察署に相談に行った際に必要書類を確認しておくことをおすすめします。
申請書類を作成する(その際に品目の選択を自動車商にする)
古物商の申請書を作成します。
また、この際に「主として取り扱う古物の区分」については自動車を選択するようにしてください。
そうすることで自動車商として登録されることとなります。
因みに、申請の際には併せて「行商する」を選択しておくようにしましょう。
「行商する」を選択しておくことで、店頭での売買だけではなく出張買取などもできるようになるからです。
申請書を提出し、申請手数料19,000円を支払う
申請書が完成したら、収集した必要書類と合わせて警察署に申請書を提出します。
申請の際についても相談の時と同様に、事前に電話で連絡してから申請書を提出しにいくようにしてください。
そして、申請書が無事に受理されたら、申請手数料として19,000円を支払います。
因みに、この申請手数料19,000円に関しては、万が一、申請が不許可の場合には返金されないので注意してください。
審査完了後に古物商許可証を受け取る
申請書を提出してから土日祝を除いた40日間後ぐらいに古物商の許可がおります。
許可がおりたら、警察署から連絡がはいるので古物商の許可証を警察署に受け取りに行きます。
これで古物商の許可取得が完了なり、晴れて中古車販売店を開業することができます。
因みに、開業届については許可を取得した後のタイミングで提出してもいいですし、許可を取得する前のタイミングで提出していても問題ありません。
古物商の取得に掛かる費用と期間
古物商の許可を取得する上で気になるのが、取得にかかる費用と期間です。
もちろん、取得にかかる費用や期間は申請内容によって若干異なりますが、目安の費用や期間について以下が解説します。
古物商の取得に掛かる費用は2万円前後
個人 | 法人 | |
申請手数料 | 19,000円 | 19,000円 |
公的書類の取得費用 | 1,000円前後 | 1,600円前後 |
古物商プレート作成費用 | 1,500円前後 | 1,500円前後 |
合計 | 約21,500円 | 約22,100円 |
古物商の許可を取得するのに掛かる費用は大体2万円前後です。
これは、警察署への申請手数料1万9千円と、住民票や身分証明書等の必要書類の取得費用1千円を合わせた費用です。
ただし、古物商の許可が仮に不許可になった場合には、警察署への申請手数料1万9千円は戻ってこないので注意して下さい。
古物商の取得に掛かる期間は60日前後
期間 | |
申請の準備期間 | 約10日 |
書類の収集・作成期間 | 約10日 |
警察署の審査期間 | 約40日 |
合計 | 約60日 |
古物商の許可を取得するまでにかかる期間は大体60日程度です。
ただ、これはあくまでも目安の期間ですので、申請書の作成にもっと時間が掛かってしまったり、書類に不備があるばあいにはそれ以上時間がかかってしまします。
ですので、できるだけスケジュールにゆとりをもって中古車販売店の開業準備をするようにしてください。
古物商の他に中古車販売に役立つ資格・許可
ここまででも解説したように、古物商の許可があれば自動車商として中古車販売店を開業することができます。
しかし、中古車販売をするにあたって、古物商の許可以外に以下の資格や許可があると役に立つので紹介しておきます。
中古車販売に役立つ資格・許可
- 自動車リサイクル法引取業登録
- オートオークションの登録
- 自動車解体業の登録
- 回送運行許可
- 自賠責保険の代理店登録
- オートローンの代理店登録
自動車リサイクル法引取業登録
中古車販売をしていると中古車の売買の他に、廃車の引き取りなどを依頼されるケースも出てくると思います。
しかし、古物商の許可を取得していると中古車の売買は出来るのですが、残念ながら廃車の引き取りは出来ないのです。
廃車の引き取りには、古物商の許可とは別に「自動車リサイクル法引取業」の登録が必要となります。
注意
古物商の許可に有効期間はないのに対して、自動車リサイクル法引取業には5年の有効期間がある点には注意が必要です。
自動車解体業の登録
廃車の引き取りが出来ると、自動車を解体して使えるパーツや部品を販売することもできます。
ただし、この場合に関しても「自動車リサイクル法引取業」に登録しているだけではできません。
自動車を解体して使えるパーツや部品を販売する場合には、別途「自動車解体業」の登録する必要があります。
注意
古物商の許可に有効期間はないのに対して、自動車解体業には5年の有効期間がある点には注意が必要です。
回送運行の許可の申請
通常、車検の切れた自動車やナンバープレートがない車は公道を走ることができません。
しかし、中古車販売を行っていると、車検の切れた車やナンバープレートがない車を移動させる必要があることも良く起こります。
そんな場合に、回送運行の許可があれば「ディーラーナンバー」という特殊なナンバープレートが発行され、一時的に公道を走行することができるようになります。
オートオークションの登録
中古車販売業は仕入れが命と言っても過言ではありません。
そんな中古車の仕入れ先の中でも、最も優れている仕入れ先の一つが中古車オークションです。
中古車オークションとは、ある一定の条件を満たした人のみが参加できる安くて、品ぞろえが豊富な中古車のオークションです。
中古車オークションに参加するには以下のような条件があります。
ココがポイント
- 古物商許可証を受けてから1年以上を経過していること
- 常設の展示場と事務所を有し、営業活動をされていること
- 連帯保証人をつけること
- 保証金10万円を預託すること
古物商の許可を得てすぐにオートオークションに登録することは出来ませんが、登録すると中古車の仕入れの幅が広がるのでおすすめです。
自賠責保険の代理店登録
自賠責保険は強制加入の保険なので、営利目的で運営されてません。
ですので、自賠責保険の代理店登録をしたからと言って、利益に直結するものではありません。
ただ、車検切れや一時抹消中の車を買い取る際に再度自賠責保険に加入しなければならず、自賠責保険の代理店登録を行うことで購入者と販売者の両方の手間が省けるというメリットがあります。
因みに、自賠責保険の代理店登録に関しては、比較的簡単に資格を取得でき、代理店登録が可能ですが、任意保険に関してはかなり基準が厳しいです。
オートローンの代理店登録
いくら中古車と言っても、車はかなり高額なものが多いので、現金一括で購入できる人はかなり少ないです。
となると、多くの人はローンを利用して購入することになります。
もちろん、金融機関でローンを組むことも可能ですが、手間や時間がかかる上に審査も厳しいというデメリットがあります。
一方、自社でオートローンを組めるように代理店登録をしておけば、購入者としても手間が省け、販売者としても中古車を売りやすくなります。
注意
開業して間もない場合には、オートローンの代理店契約が認められないケースも多いので、ある程度は中古車販売店としての実績を作ってから登録した方がいいです。
古物商を取得するなら行政書士に依頼するのがおすすめ
古物商の取り方の所でも解説したように、古物商の許可申請は警察署などに相談に行けば自分で申請することも可能です。
ただし、今までにこのような手続きを行った経験がない場合には、想像以上に時間と労力を要してしまうこともあります。
特に、これから自動車商として開業するわけなので、開業準備がかなり忙しい中で、古物商の許可申請に手間・時間を割いてられないという人も多いです。
なので、そういった場合には、古物商許可の申請を代行業者に依頼するという選択肢も視野に入れてみるのも良いと思います。
古物商許可の申請は行政書士が行っているので、営業所近くの古物商を取り扱っている行政書士事務所に相談してみるのも良いと思います。
又、弊所でも全国対応で古物商の許可申請の代行を受け付けているので是非ご依頼ください!
まとめ
この記事のまとめ
- 中古車販売店は古物商があればできる
- 古物商の取得費用は2万円前後
- 古物商の取得期間は60日前後
- 自動車商は審査が厳しいので専門家に依頼するのがおすすめ