事業目的の記載例は?
法人で古物商の申請をする場合には必ず定款のコピーが必要となります。
ただ、定款は使う機会があまりない書類なので、どんな書類なのかわからいという方も多いです。
この記事では「そもそも定款とは?」や「定款の事業目的の記載例」、「定款を紛失した場合にはどうすればいいか?」について解説します。
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古物商の申請に必要な定款とは?
古物商の申請に必要な定款とは、会社の基本情報や規則などが記載された「会社のルールブック」みたいなもので、会社の目的や名前、本店所在地、資本金、発起人は誰かなどが書かれています。
因みに、会社に関連する書類として法人登記簿(履歴事項全部証明書)と定款を勘違いしてしまう方も多いです。
法人登記簿はあくまでも法人の情報を公に知らせるための書類で、法務局で誰でも簡単に取得できる書類です。
一方で、定款は会社設立の際に必ず作成する重要な書類の一つで、通常は会社に保管していることが一般的です。
そして、古物商の申請には「定款」も「法人登記簿」も両方必要となる書類ですが、別物ですので注意して下さい。
定款を提出する前に必ず確認すべき2つのこと
古物商の申請で定款を提出する前に必ず以下の2つの事を確認するようにしてください。
- 提出する定款は最新のものか?
- 事業目的に古物商関連の目的が入っているか?
提出する定款は最新のものか?
古物商の申請の際に提出する定款は最新のものでなければなりません。
例えば、商号や本店所在地、事業目的が設立時から変更や追加されている場合には、変更後の定款を提出しなければなりません。
登記簿謄本は変更されているけど、定款については変更し忘れているというケースをよく見かけるので、登記簿謄本と定款を見比べて不整合な点がないかを確認してみてください。
そして、もし定款が変更されていない場合には、定款を最新の状態に変更する必要があります。
因みに、定款そのものが変更されていなくても、内容を変更する際に作成した株主総会議事録という書類を添付することで定款を変更しているとみなされます。
ですので、定款そのものが変更されていない場合には、変更内容に関する株主総会議事録がないかも確認してみてください。
事業目的に古物商関連の目的が入っているか?
法人で古物商の申請をする場合、法人の定款の事業目的に古物商に関連する事業目的が記載されていなければなりません。
例えば、「古物営業法に基づく古物商」、「中古品の買取販売」、「古物の売買」などです。
そして、もし定款の事業目的に古物商関連の目的が入っていない場合には、定款の事業目的に古物商に関連する事業目的を追加する必要があります。
因みに、法人登記簿(履歴事項全部証明書)にも事業目的の記載があるので、法人登記簿の事業目的の欄に古物商に関連する事業目的が入っていない場合には法人登記簿の変更も必要となります。
古物商の定款の事業目的の記載例
定款の事業目的に古物商に関連する項目が入っている必要がありますが、どのような内容が記載されていればいいのでしょうか?
また、もし定款の事業目的に古物商に関連する内容が入っていない場合には、どのような事業目的を追加すればいいのでしょうか?
以下では、古物商に関連する事業目的の記載例をジャンル別に紹介します。
ジャンル | 事業目的の記載例 |
リサイクルショップ | 古物営業法に基づく古物商、リサイクルショップ店の経営、古物の仕入並びに販売、中古家電の買取及び販売 |
中古車・中古バイク屋 | 古物営業法に基づく古物商、中古車の買取及び販売、中古バイクの買取及び販売 |
通販ショップ・せどり | 古物営業法に基づく古物商、通信販売業、中古品の買取及び販売、遊戯カードの買取及び販売 |
ブランド品買取店 | 古物営業法に基づく古物商、貴金属及び宝飾品並びにブランド品の買取販売 |
金券ショップ | 古物営業法に基づく古物商、切手、葉書、収入印紙の販売、映画・コンサート・旅券などの各種チケットの売買に関する業務 |
まず、定款の事業目的に「古物営業法に基づく古物商」や「中古品の買取及び販売」などを入れておくと、古物商の許可申請自体は問題ありません。
ただ、定款は借り入れの際に銀行等にも提出するケースがあり、その場合には「古物営業法に基づく古物商」と記載されているだけでは、どのような事業を行っているのかわかりにくいです。
そこで、「古物営業法に基づく古物商」に加え、具体的に取り扱う商品のを記載しておくと更に良いです。
例えば、中古自動車を販売するのであれな「中古車の買取及び販売」と記載するイメージです。
ですので、事業目的の追加の際には「古物営業法に基づく古物商」と合わせて「中古〇〇の買取及び販売」も追加しておくと良いです。
古物商の申請前に定款の原本証明(奥書)をする
定款が最新のもので、事業目的にも古物商に関連する項目が入っていることが確認できたら、あとは定款の原本証明(奥書)をします。
原本証明(奥書)とは、原本を提出できない書類に関して、その写し(コピー)を提出する場合に、間違いなく原本の写しであることを証明することです。
では、具体的にどのように原本証明(奥書)をすればいいかというと、コピーした定款の最終ページの空いているスペースに赤字で以下の文章を記入し押印します。
以上、原本と相違ありません。
令和○年〇月〇日
古物商事株式会社
代表取締役 山田 太郎 ㊞
因みに、定款の提出方法については各都道府県によって、若干異なる場合があります。
例えば、製本された定款でなければならなかったり、各ページに割印を求められる警察署もあります。
ですので、事前に申請先に定款の提出方法を確認し、申請の際には現地でも修正できるように念のために法人の実印をもっていくことをおすすめします。
事業目的に古物商に関する項目が入っていない場合は?
もし、定款の事業目的を確認して、事業目的に古物商に関連する項目が入っていない場合に取れる選択肢は2つです。
- 定款を変更してから古物商を申請する
- 古物商の申請をしてから定款を変更する
まず、一般的には古物商に関連する事業目的が記載されていない場合、先に定款の変更をしてから古物商の申請をします。
ただし、古物商の許可をできるだけ早く取得したい場合、定款の変更にもかなり時間を要する為、相当な時間ロスとなってしまいます。
そこで、もう一つの選択肢が古物商の申請をしてから定款を変更する方法です。
本来、法人登記簿や定款の事業目的に古物商に関連する事業目的が入っていないと古物商の申請はできません。
しかし、事業目的の追加を約束する「確認書」という書類を添付することで、定款の変更前でも古物商の申請が可能となります。
定款の変更が必要な場合の確認書の記載例
確認書には特に決まった書式はありません。
ですので、基本的には法人登記簿や定款の事業目的に古物商に関連する項目を追加する旨を記載すれば問題ありません。
ただし、それだとどのように記載するばいいかわからないので、以下の確認書の記載例を参考にしながら作成してみてください。
定款をなくしてしまったらどうすればいい?
古物商の申請には必ず定款を提出する必要があるのですが、定款を紛失してしまったという方も多いです。
というのも、定款は会社を設立する際に作成するのですが、それ以外に使用する機会はほとんどないので、どこに保管したのか忘れてしまいやすいのです。
では、定款を紛失してしまった場合にはどうすればいいのかというと、以下の4つの方法があります。
定款紛失時の対処法
- 定款を再発行する
- 法務局で閲覧する
- 司法書士等に確認する
- 定款を再作成する
定款を再発行する
まず1つめは公証役場で定款の原本を再発行してもらう方法です。
法人の定款は法人設立時に公証役場で認証を必ず受けるのですが、その認証された定款のデータは公証役場で20年間保管されます。
ですので、公証役場に請求することで定款の再発行が可能となります。
ただし、注意点としては公証役場で再発行できる定款は法人設立時の定款なので、その後、定款内容が変更されていた場合でも変更内容は反映されていないので変更が必要となります。
法務局で閲覧する
2つめは法務局で閲覧をする方法です。
定款は会社設立時に法務局に提出する場合はもちろん、それ以外に、変更事由が発生した場合に添付書類として定款を法務局に提出している可能性があります。
そこで、その提出した際の添付書類を閲覧することで定款の内容を確認できるというわけです。
ただし、注意点としてはあくまでも「閲覧」ができるだけであって、定款をコピーして持ち帰ることはできません。
ですので、スマホやカメラで文書を撮影し、その撮影した写真をもとに定款を作り直す流れとなります。
司法書士等に確認する
3つめは定款の作成を依頼した司法書士や行政書士に確認をする方法です。
法人を設立する際や、法人に変更事由が発生した場合に司法書士や行政書士などの専門家に依頼する方が多いと思います。
そして、司法書士や行政書士は過去に作成した定款のデータ等を保存している可能性がかなり高いため、事業を説明すると、保存しているデータを送ってもらえるかもしれません。
ですので、もし会社設立等を司法書士や行政書士に依頼した場合には、確認してみることをおすすめします。
定款を再作成する
最後の4つめは定款を作成する方法です。
基本的にはここまでに紹介した3つのどれもできない場合には、定款を新たに作成するしか方法はありません。
ただし、定款というのは会社にとってとても重要な書類ですので、再作成する場合にはちゃんとして手順を経なければなりません。
定款を再作成する場合、まずは法務局で法人の登記簿を取得します。
そして、その法人登記に記載されている「商号」「目的」「本店所在地」「公示する方法」「発行可能株式総数」を基に、新しく定款を作成していきます。
定款の作成が完了したら、最後に株主総会で「新たに作成した定款を現行定款とする」という議決を行うことで定款の再作成が完了となります。
定款・法人登記簿の事業目的の追加・変更の仕方
定款や登記簿の事業目的に古物商に関連する事業目的が入っていない場合には、申請前若しくは申請後に事業目的の追加が必要となります。
定款と法人登記簿を変更する方法としては以下の3つです。
- 自分で手続きする
- 専門家に依頼する
- 登記変更サービスを利用する
この中で、個人的におすすめなのが③ネットサービスの利用です。
なぜなら、自分で手続きをするにしては少しハードルが高いですが、専門家に依頼するほど内容でもなく、専門家に依頼した場合にはかなり費用が高いからです。
その点、登記変更サービスを利用した場合、変更登記手続きにかかるコストは司法書士に依頼すると5万円近く掛かりますが、以下のサービスを利用すると1万円程度で書類が作成できるのでおすすめです。
まとめ
この記事のまとめ
- 定款の事業目的を確認する
- 古物商関連の事業目的が入っていない場合は変更が必要
- 事業目的に「古物営業法に基づく古物商」を追加する
- 定款が準備できたら原本証明(奥書)をする
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所