古物商って誰でも取れるの?
これから古物商を取ろうと思った時にどのような要件を満たせば取れるのか気になりますよね?
そもそも、誰でも取れるものなのでしょうか。
そこでこの記事では「古物商を取るための要件」や「古物商が絶対に取れない欠格事由」、「古物商の要件や欠格事由で取れない場合の対策はあるのか?」について解説します。
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古物商を取るには3つの要件を満たすだけ
古物商は以下の3つの要件を満たすだけで基本的には誰でも古物商を取得することができます。
- 適切な営業所を設けること
- 不備のない申請書・添付書類を提出すること
- 古物商の欠格事由に申請書・管理者が該当しないこと
適切な営業所を設ける事
古物商を取るには必ず営業所を必ず設けなければなりません。
営業所というのは、中古品を売買する拠点となる場所のことで、ネットだけで売買する場合でも営業所は必要となります。
例えば、店舗で中品を売買する場合には店舗を営業所として登録したり、ネットだけで売買する場合には事務所や自宅を営業所として登録するのが一般的です。
因みに、営業所はどんな場所でもいいわけではなく、実在する個室でなければなりません。
具体的には、バーチャルオフィスのような実在しない住所や、個室として契約していないレンタルオフィスなどは営業所として認められません。
不備のない申請書・添付書類を提出すること
古物商の申請には不備のない申請書と添付書類を提出する必要があります。
そして、法律で定められた添付書類については必ず添付しなければならず、添付できなかった場合には申請書が受理されません。
また、申請書の記載内容についても、記載ミスや記入漏れがある場合には受理されず、補正等を求められる可能性もあります。
一方で、法律で定められた書類以外の添付書類に関しては、任意で添付が求められているだけなので、その書類を添付しなかったことによって許可が下りないということはありません。
古物商の欠格事由に申請書・管理者が該当しないこと
古物商の申請の中で最も注意しなければいけない要件が古物商の欠格事由に申請書・管理者が該当しないことです。
営業所や申請書・添付書類に関しては、仮に要件を満たせなかったとしても場所を変えたり書類を修正したりすることで要件を満たすことが可能です。
一方で、古物商の欠格事由に該当してしまっている場合には絶対に古物商の許可をとることができません。
因みに、古物商の欠格事由は全部で10個あり、その10個の内1つでも該当する場合には古物商の許可を取得することができないので、申請前に事前にしっかりと確認しておくことをおすすめします。
古物商が絶対に取れない10の欠格事由とは?
上記の古物商を取るための要件でも解説した通り、古物商の10個の欠格事由があります。
この中のどれか1つにでも該当した場合には、絶対に古物商の許可は取れないので事前に確認するようにしてください。
また、もし欠格事由に該当するにも関わらず、古物商の申請書した場合には不許可となり、申請手数料の19,000円は返金されません。
破産者で復権を得ない者
破産者で復権を得ていない人は古物商の許可を取得することが出来ません。
破産者とは、破産手続き開始の決定を受けた者をいいます。
ただ、過去に破産歴がある全ての人が古物商の欠格事由に該当するわけではなく、破産者で復権を得ている人については古物商の古物商許可の取得が可能です。
破産の復権とは、通常、破産手続き開始が決定すると権利や資格などに制限を受けるのですが、その権利や資格などの制限を消滅させて破産者本来の法的な地位に回復させること破産者の復権とを言います。
では、どのような場合に破産者が復権を得られるのかというと、以下のような場合に復権を得られます。
復権を得られる場合
- 免責許可の確定
- 破産手続きの廃止
- 個人再生の再生計画認可が決定
- 破産手続きから10年が経過
- 全ての債務がなくなる
そして、破産者の9割以上の人は破産開始から3~6カ月程度で免責許可が確定し、復権が得られるので古物商の許可を取得することが可能ということです。
因みに、免責許可が認められない場合というのは、財産を隠蔽や不当な債務負担の他、浪費やギャンブルで借金をした場合には、免責不許可となってしまいます。
つまり、その場合には古物商許可を取得することもできません。
逆に言うと、破産者の9割以上の人は復権を得ているので、ほとんどの人は古物商の許可を取得できるというわけです。
犯罪で処罰を受けてから5年が経過していない人
犯罪で処罰を受けてから5年が経過していない人も古物商を取ることができません。
ただ、犯罪を犯して処罰された全ての人が対象となるわけではなく、以下に該当する人のみが対象となります。
欠格事由に該当する犯罪
- 禁固以上の刑に処せられた人・・・刑法によると刑の重さは「死刑→懲役→禁固→罰金→拘留及び科料」となっているので、禁固・懲役を受けた人です。因みに、禁固とは受刑者を刑事施設(監獄)に拘置する刑、懲役とは、受刑者を刑事施設内で拘置し、工場などで所定の作業を行わせる刑のことを言います。
- 無許可で古物営業を営んだ人・・・古物営業を営んでいるにも関わらず無許可で古物営業を営み、刑に処せられた人。
- 不正の手段によって古物商の許可を得た者・・・申請内容を偽り、又はその他の不正の手段によって古物商の許可を受けて刑に処せられた人。
- 名義貸しで古物営業を営ませた者・・・自分の名義を貸して誰かに古物営業を行わせて刑に処せられた人。
- 古物営業の停止命令等に違反した者・・・何らかの事情によって営業停止を命ぜられたにもかかわらず、それを無視して営業を行い刑に処された場合。
- 他人の物を窃盗した者(刑法235条)・・・窃盗で罰金刑に処された場合。
- 自分の利益の為に地位や役職を利用して役所や会社に損害を与えた者(刑法247条)・・・自分が利益を得る目的で、自分の地位や立場を利用してモノやお金などを横領した場合。
- 遺失物等を横領した者(刑法254条)・・・落とし物を自分の不法に自分の物にして罰金刑に処された場合。
- 盗品等を譲り受けた者(刑法256条第2項)・・・誰かが盗んだ物を譲り受けて自分の物にして罰金刑に処された場合。
因みに、①については禁固以上ですが、②~⑨については禁固以下の刑であっても、刑に処されていた場合には古物商の許可を取得することが出来ません。
なぜなら、古物商の許可制度は、盗品の防止や、速やかな盗品の発見などを目的として制定された法律なので、上記に該当する人に古物商の許可を与えるとその目的を達成できない可能性がからです。
逆に言うと、傷害罪などで罰金刑に処された場合には①〜⑨には該当しないので、古物商の許可が取得できるというわけです。
又、過去に①~⑨の犯罪を犯していた場合でも、以下のような場合にも古物商の許可が取得できます。
欠格事由に当たらない場合
- 禁固刑以上の場合で、執行猶予が与えられ、執行猶予期間を経過した者
- 刑の執行が終わってから5年以上が経過している者
- 刑の執行を受けることがなくなってから5年以上が経過している者
つまり、欠格事由に該当する罪を過去に犯した場合でも、執行猶予を無事終えた場合や5年間まじめに生活を送ることで古物商の許可を取得することができるようになるわけです。
反社会勢力との関りがある人
最近では反社会勢力等による組織的な自動車の窃盗などが行われており、古物商という古物営業の資格が悪用される危険性が高くなっています。
そこで、これまでは暴力団等を排除する規定はありませんでしたが、平成30年10月24日から古物商許可の欠格事由として暴力団等も追加されることになりました。
そして、古物商の欠格事由に該当する暴力団員等とは以下のような者をいいます。
暴力団員等に該当する者
- 暴力団員
- 暴力団でなくなってから5年を経過していない者
- 暴力団と同じような犯罪的組織
- 過去10年間に暴力的不法行為等を行った者
- 暴力団のような暴力的不法行為等を行って公安委員会から指示・命令を受けて3年が経過していない者
そして、ここでのポイントとしては、欠格事由が暴力団員だけに限定されているわけではなく、暴力団のような暴力的不法行為を行う組織の者や、暴力的不法行為を行った者に対しても同様に欠格事由に該当するとされています。
因みに過去に暴力団員だった場合や、暴力的不法行為を行う組織にいた人でも、足を洗って一定期間経過した場合には古物商の許可を取得することが出来るようになります。
住居の定まらない人
住所の定まらない者とは、住民票に記載されている住所と実際に住んでいる住所が違う場合を指します。
古物商の許可を申請する際に、必要書類に現在住んでいる住所を記載するのですが、それと併せて住民票を添付書類として提出します。
その際に、現住所と住民票の住所が一致しない場合には、住所の定まらない者として不許可になってしまう可能性があるのです。
ただし、現住所と住民票の住所が一致していなければ、必ず不許可になるというわではなく、合理的な理由がある場合には例外として認められる場合が有ります。
例えば、一時的に別居している場合や、住居の建て替えで一時的に仮住まいに住んでいる場合などです。
その場合には、それらの証拠を提出することで住所の定まらない者の例外として認められる可能性があります。
ですので、もし仮に合理的な理由もなく、住民票の変更届を怠っていて現住所と住民票の住所が一致しない場合には不許可になる可能性がある、先に変更届を提出してから古物商の許可申請を提出することをおすすめします。
古物商の許可を過去に取り消された者
古物商の許可を取り消されてから5年間が経過していない人についても古物商を取れません。
何らかの違反に対して古物商の許可の取り消し処分を行ったにも関わらず、何の制約もなく再び古物商の許可が取得できるのでは意味がないからです。
ですので、古物商の許可を取り消された人は取り消されてから5年が経過するまでは古物商の許可を取得することが出来ません。
ただし、この欠格事由に関しても例外が存在します。
それは、違反によって古物商の許可が取り消されたのではなく、古物営業の廃業などを理由で“自ら古物許可証を返却”して許可が取り消されたような場合です。
例えば、以前は古物営業を行っていたけど、別事業が忙しくなって、古物営業を廃業して古物商許可証を返却したような場合です。
この場合には、5年などの制限期間は一切なく、すぐにでも古物商の許可を取得することが出来ます。
違反後に古物商の許可証を返納した者
何らかの違反により古物商の許可が取り消され、取り消し処分が確定するまでに古物商の許可証を返却した人は古物商の許可を取ることができません。
上記の「古物商の許可を過去に取り消された者」で“自ら古物許可証を返却”した場合には、例外として古物商が取れると解説しましたが、これはあくまでも何の違反もなかった場合です。
ですので、違反等により処分を受けてしまった場合には、その後に自主的に許可証などを返却しても5年間は欠格事由に該当します。
心身の故障により適正な判断・認識・意思疎通ができない人
心身の故障により、適正な判断や認識、意思疎通ができない場合には古物商の許可を取得することができません。
具体的には、認知症の方などがこの項目に該当します。
一方で、鬱などの精神疾患を患っていた場合でも、この項目には該当せず古物商の許可を取得できるので安心して下さい。
未成年者
20歳未満の未成年者に関しても古物商許可の欠格事由に該当します。
これは、未成年者は保護者や親権者の同意等がなければ、売買などの契約を行うことが出来ないからです。
ただし、未成年者の場合でも以下に該当する場合には古物商の許可を取得することが出来ます。
未成年の例外
- 既に結婚している場合
- 古物商を相続した場合
- 法定代理人から営業の許可を受けている場合
未成年者が婚姻している場合には、成年擬制といって成年に達した者として法律で扱われるようになります。
つまり、未成年であっても成年と同じように法律行為が出来るようになるので、古物商の許可の取得も認められるのです。
又、古物商を未成年が相続した場合や親などから営業の許可を受けた場合にも、古物商の許可を取得することが出来ます。
ただし、未成年が商人として営業を行う場合には、未成年登記簿への登記が義務づけられていますので、その点は注意が必要です。
不適任な管理者を選任した人
古物商は古物営業を適正に実施するために、各営業所に管理者を1人選任しなければなりません。
そして、以下に該当する人を管理者に選任した場合にも古物商の許可を取ることができません。
管理者になれない者
- 未成年者
- 破産者で復権を得ない人
- 犯罪で処罰を受けてから5年が経過していない人
- 反社会勢力との関りがある人
- 住居の定まらない人
- 古物商の許可を過去に取り消された者
- 違反後に古物商の許可証を返納した者
- 心身の故障により適正な判断・認識・意思疎通ができない人
「あれ?どこかで見覚えがあるな・・・」って思ったんじゃないでしょうか?
そうなんです、営業所の管理者の欠格事由は古物商許可の欠格事由とほぼ同じなのです。
つまり、欠格事由によって古物商の許可を取得することができない人は、営業所の管理者にもなれないというわけです。
そして、そういった管理者の欠格事由に該当する人を管理人として選任して古物商の許可申請をした場合には不許可をされてしまします。
法人の役員が①~⑧に該当する場合
そもそも、法人(会社)と役員は全く別人格なので、法人には法人の権利や義務があります。
つまり、法人が古物商の許可を取得することも可能なのです。
しかし、それでは古物商の許可の欠格事由に該当する人は、法人を設立して法人に古物商の許可を取得させることができてしまいます。
そうなると、古物商に欠格事由を設けている意味がなくなってしまうので、法人で古物商を取る場合には全ての役員が欠格事由に該当しない必要があります。
よって、法人の役員がここまでに紹介した古物商許可の欠格事由に誰か一人でも該当する場合には、古物商の許可を取得できません。
古物商の要件や欠格事由で取れない場合でも取る方法はある?
ここまで古物商の要件や欠格事由について解説してきましたが、「もし、要件や欠格事由を満たせなかった場合でも取る方法はある?」と疑問に思った方もいるかと思います。
結論から言うと、営業所や申請書・添付書類の要件に関しては取れる可能性がありますが、欠格事由に該当する場合には絶対に取れません。
なぜなら、営業所や申請書・添付書類に関しては対策が打てるのに対して、欠格事由に関しては対策が一切ないからです。
例えば、もし営業所の要件が満たせていない場合には、レンタルオフィスを借りたり、実家などを営業所とするのどの対策が打てますし、申請書や添付書類については警察署の指示に従って補正を行えば要件を満たすことが可能です。
一方で、欠格事由に該当する場合には、欠格事由に該当しなくなるのをただただ待つしかありません。
例えば、5年以内に禁固刑以上の刑に処させていたり、古物商の無許可営業で罰せられたりしていた場合には、5年経過するまで待つしかないのです。
代わりに誰かに古物商を取ってもらうのはNG
「欠格事由に該当するけど何かいい方法ないですか?」とご相談を頂くことがあります。
その時によく「家族や友人に代わりに古物商を取ってもらうのはダメですか?」と提案されるのですが、これは絶対に辞めてください。
というのも、別の人の古物商を借りることはそもそもできないので無許可営業になりますし、代わりに古物商を取った家族や友人は名義貸しという法律違反に該当します。
そして、無許可営業や名義貸しを行った場合には3年以下の懲役、又は100万円以下の罰金、もしくはその両方を課されてしまう可能性があるのです。
つまり、誰かに代わりに古物商を取ってもらう行為は、家族や友人を犯罪に巻き込んでしまうわけです。
さらに、無許可営業や名義貸しで罪に問われた場合には更にそこから5年間は古物商の許可をとることができなくなります。
ですので、欠格事由に該当するからといって代わりに誰かに古物商を取ってもらうのはやめましょう。
まとめ
この記事のまとめ
- 古物商の要件は営業所・申請書類・欠格事由の3つ
- 10個の欠格事由に該当すると古物商をとれない
- 欠格事由で取れないからといって第三者に代わりに取ってもらうのはNG
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所