古物商取得後の手続

古物商の三大義務とは?|プレート掲示や台帳記録はしないとダメ?

古物商の三大義務って何?
プレート掲示や台帳記録はしないとダメ?
古物商の初心者
古物商の初心者

古物商は守らなければならない義務が法律で定められています。

そして、その義務を守らなかった場合には、営業停止や罰金、懲役などの厳しい罰則が設けられています。

この記事では、古物商の三大義務をはじめとした守らなければいけない義務や、その罰則について解説します。

この記事を書いた人

長島 雄太

NAGASHIMA行政書士事務所

NAGASHIMA行政書士代表。古物商専門の行政書士。古物商の許可に関するメディアサイト「古物商の学校」を運営しており、古物商の許可取得実績500件以上。古物商許可の取得率100%
 

古物商の三大義務とは?

古物営業法において、古物商は古物営業を営む上で守らなけれないけない事項が色々と定められています。

その中でも、特に取り上げられることが多い以下の3つの義務が古物商の三大義務と呼ばれています。

  1. 本人確認の義務
  2. 取引の記録義務
  3. 不正品の申告義務

数ある遵守事項の中でも、なぜこの3つが取り上げられることが多いのか?

その理由は、古物営業法の目的が「盗品等の売買の防止、速やかな発見、窃盗の抑制、被害の迅速な回復」であり、三大義務はこの目的に直結する内容だからです。

以下では、古物営業法の三大義務の内容についてそれぞれ解説していきます。

本人確認義務

古物商は古物を買い受け・交換等を行う際に、相手方の本人確認を行わなければなりません。

これは、盗品の古物市場への流入を防止するという古物営業法の目的を達成させるために課されている義務です。

相手方の本人確認の方法は以下のいずれかを行うものとされています。

本人確認の方法

  • 相手方の住所・氏名・職業及び年齢を確認する
  • 相手方から署名のある住所等が記載された文書の交付を受け取る
  • 相手方から電子署名付きの住所等が記載された電子メールを受け取る
  • その他、これらに準ずる公安委員会規則で定められたもの

そして、これらの本人確認は、ただ単に形式的に行えば良いというわけではなく、相手方の態度や取引商品、数量、商品の状態等の状況によって、偽装の疑いがないかを慎重に確認しなければなりません。

本人確認義務の例外

上記でも解説したように、古物商は古物を買い受け・交換等を行う際に本人確認を行わなければなりませんが、全ての場合に本人確認を行わなければならないわけではなく、例外も設けられています。

それが以下の2つの場合です。

本人確認義務の例外

  1. 対価の総額が一万円未満の取引をする場合
  2. 自分が売却したものを、売却相手から買い受ける場合

上記の場合には、本人確認義務が例外として認められています。

ただし。①については自動車やバイクの部品、ゲームソフト、カートリッジ、CD、DVD等の一定の古物については、取引の総額が一万円未満でも本人確認が必要となります。

台帳への記録義務

古物商が古物の取引を行う場合には、帳簿等に取引記録を記載又は記録しなければなりません。

これは、盗品が古物市場に流入した際に、盗品の迅速な発見や回復を目的として課されている義務です。

古物商は古物の売買・交換等を行う際には以下の点を記録しなければなりません。

記録する項目

  • 取引の年月日
  • 古物の品目と数量
  • 古物の特徴
  • 古物の買取相手又は販売相手の住所・氏名・職業・年齢
  • 本人確認の区分

本人確認の区分とは、「三大義務その1」の本人確認方法の中のどの方法によって確認を行ったかです。

取引の記録義務の例外

また、この記録義務にも本人確認と同様に例外も設けられています。

どのような例外があるかというと以下のような場合です。

取引の記録義務の例外

  1. 一万円未満の古物を買い取りする場合
  2. 自分が売却したものを、売却相手から買い受ける場合
  3. 美術品・時計・宝飾品・自動車・バイク等以外を売却する場合

これらの場合には、取引の記録義務が免除されます。

ただし、①については本人確認義務と同じく、売買の取引価格が1万円以下の少額でも窃盗・盗品の被害が多いバイク関連商品、ゲーム関連商品、CDやDVD、書籍などは記録義務が免除されません。

不正品の申告義務

古物商は、買い受けた古物や売却の委託を受けた古物が不正品があると認めた場合には、直ちに警察署にその旨を申告しなければなりません。

これは、盗難や窃盗によって古物市場に流入した古物の被害者の迅速な回復を目的として課されている義務です。

古物商は、取り扱う古物が盗品でないかを常に注意し続けなければなりません。

そして、仮に「もしかしたら、これは盗品かもしれない・・・」と思う古物がある場合には、直ちに警察に連絡しなければなりません。

不正品かどうかの判断は、持ち込まれた古物の種類や数量、相手の態度や年齢、職業などから総合的に判断して、盗品の取り扱いを未然に防がなければなりません。

又、自動車やオートバイなどを取り扱う場合には、営業所の管理者に対して不正品であるかどうかを見抜くための知識や技術などの経験を得させるように努めなければなりません。

古物商の守らなければならないその他の義務

上記はいわゆる古物商の三大義務と呼ばれる、古物商が守らなければならない最もメジャーな事項です。

ただし、古物商が守らなければいけない事項は三大義務だけに限られているわけではなく、それ以外にも以下のような9つの遵守事項が設けられています。

  1. 古物商プレートの掲示
  2. 変更届出
  3. 管理者の選任
  4. 帳簿等の備え付け
  5. 差し止め
  6. 許可証の携帯
  7. 営業の制限
  8. 名義貸しの禁止
  9. 競り売りの届け出

古物商プレートの掲示義務

古物商として古物営業を営む者は、公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定められた様式の古物商プレートを掲示しなければなりません。

また、ホームページやインターネットを利用して古物商を営む場合には、その取り扱う古物に関する個々の商品ごとに、許可を受けた公安委員会の名称と許可証の番号を表示しなければなりません。

但し、トップページに許可を受けた公安委員会の名称と許可証の番号を表示するか、トップページに古物営業法に基づく表示を行っているページのリンクを設定した場合には、個々の商品にそれらの情報を表示する必要はりません。

変更届出の提出

古物商の申請内容に変更があった場合には、警察署に変更届を提出しなければなりません。

変更内容については古物商許可証に記載されていている事項を変更する場合には書換申請、それ以外の事項に変更が生じた場合には変更届出を提出することになります。

因みに、書換申請・変更申請は変更内容によって提出期限が異なるため、何か変更事由が発生しそうな場合には、必ず事前に期限を確認しておくようにしてください。

管理者の選任義務

古物商は営業所ごとに、その営業所の業務を適正に実施するための責任者として管理者を1人選任しなければなりません。

そして、以下の事項に該当する人は管理者として選任することは出来ません。

管理者の欠格事由

  • 未成年者
  • 成年後見人若しくは被保佐人
  • 破産者で復権を得ていない者
  • 住所の定まらない者

また、「三大義務その3」でも少し触れた通り、古物商は選任した管理者に対して、不正品であるかどうかの判断をするための必要な知識や技術又は経験を得させる努力義務も課されています。

具体的には、自動車やオートバイの車体、車体番号打刻部分等における会オズ等の有無や、改造等がある場合にはその態様・程度を判断するために必要な知識や技術、経験であって、古物営業の業務を3年以上従事した者が通常有するようなものです。

台帳等の備え付け義務

古物商は、帳簿等を最後に記録した日から3年間は営業所に備え付けておかなければなりません。

また、パソコン等によってデータで保存している場合にも、最後に保存した日から3年間は残しておかなければならず、しかも、直ちに書面で表示することが出来る状態で保存しておかなければなりません。

そして、帳簿やパソコン等によって保存していた帳簿データを、もしデータを毀損したり、消失してしまったりした場合には、直ちに警察署に届け出なければなりません。

差し止め

盗品等の疑いがある物に関しては、警察本部長等は古物商に対して一定期間保管をするように差し止めを行う事が出来ると定められています。

そして、差し止めを受けた古物商は、定められた期間中は、適切にその古物を保管しなればなりません。

差し止められた古物をに関しては、販売・交換できないのは勿論のこと、販売の委託を受けていた場合には委託者に返却することも出来ません。

許可証の携帯

古物商は行商をし、又は競り売りをする場合には、古物許可証を携帯しなければなりません。

行商というのは、営業所とは違う場所での営業の事をいい、露店などでの営業や自動車などの訪問セールスなどが該当します。

又、古物商は代理人や、使用人、従業員に行商をさせる場合には、国家公安委員会規則で定めらえている様式の行商従業者証を携帯させなければなりません。

そして、取引相手から許可証(行商従業者証)の提示を求められた場合には、提示しなければならない義務があります。

営業場所の制限

古物商は、営業所や取引相手の住所以外の場所で、古物の売買や交換を行ってはいけません。

例えば、道路やコンビニの駐車場、相手の勤務先の会社などです。

なぜなら、営業所や相手方の住所以外で取引を行った場合には、古物営業法に設けられている各種義務が確実に実行されない可能性がある為です。

名義貸しの禁止

古物商は、自分の名義の古物商を利用して、他人に古物営業を営ませることは出来ません。

なぜなら、それを認めてしまうと、古物商許可の取得要件である欠格事由に該当する者が、他人に依頼して古物商の許可を取得してもらい、名義を借りて古物営業を営むことが出来てしまうからです。

因みに、もともと個人事業主で古物商を取得していて、法人成りした後に個人で取得した古物商許可を使用することは名義貸しに該当するため、法人で新たに古物商の許可を取得しなければなりません。

競り売りの届け出

古物商は競り売りを行う場合には、その場所を管轄する公安委員会に日時や場所を届け出なければなりません。

競り売りというのは、古物商が複数集まって、価格を競争させて取引を行う営業形態の事です。

この競り売りは、営業所での取引とは違って、短時間で多くの取引が成立する特殊な営業形態なので、盗品の処分などに利用されるケースも多いことから、あらかじめ警察の指揮監督を確保するために届け出が必要とされています。

古物商の義務違反に対する罰則

ここまでは古物商が守らなければいかない事項について紹介しましたが、古物営業法では、遵守すべき法律に違反した場合には以下のような厳しい罰則も設けられています。

違反時の罰則

  • 3年以下の懲役又は100万円以下の罰金
  • 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金
  • 20万円以下の罰金
  • 10万円以下の罰金

それぞれの義務の内容によって違反時の罰則の厳しさは違うのですが、最も厳しい罰則の場合には3年以下の懲役又は100万円以下の罰金、又はその両方が課される可能性があります。

ですので、「知らず知らずのうちに古物営業法の違反を犯していた・・・」とならない為にも、古物商として営業を行う場合には、今回紹介した古物商の三大義務とその他の義務について事前にしっかりと理解しておくことをおすすめします。

また、違反内容によっては、古物商が法律に基づく命令の規定に違反し、盗品の売買等の防止や盗品の速やかな発見が著しき阻害されるそれがあると認められた場合には上記罰則の他に営業許可の取り消しや、営業停止を命ぜられる可能性もあります。

法律改正でインターネットへの古物商表記が必須に!

インターネットを利用して中古品の売買を行う場合、以下の事項をホームページ上に掲載しなければなりません。

  • 氏名又は名称
  • 許可をした公安委員会の名称
  • 古物商の許可番号

一方で中品の売買は行っているけど、ネットで中古品の売買を行っていない場合には、HP等にこれらの情報は記載する必要はありませんでした。

しかし、古物商の法律が一部改正され、令和6年4月1日以降は基本的には全ての事業者がHPに古物商に関する情報を記載しなければならなくなりました。

つまり、ネットで中古品を売買しているか、していないかに関わらず、HPに古物商の情報を記載しなければならなくなったというわけです。

ただし、これにも例外が設けられており、ネットで売買しない業者で以下のどちらかに該当する場合には古物商に関する情報を記載する必要はありません。

記載が不要な例外

  • 従業員が5名以下である場合
  • HPなどのウェブサイトを保有していない場合

上記のような場合には例外に該当するため、古物商の関する情報の記載は不要となります。

一方で、ネットで売買する業者に関しては上記の例外項目に該当しても必ず記載が必要になるので注意して下さい。

まとめ

この記事のまとめ 

  • 本人確認・取引記録・不正品申告の三大義務を必ず守る
  • その他の義務についても必ず守る
  • 違反した場合には厳しい罰則がある
  • 違反した場合には営業停止や許可取り消しになる可能性もある

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